その八七


 






 






 






















  青いうた ページのすみで 口笛ふいて

世の中にはたくさんの色が
ばらばらにあって
そのばらばらなものを
まぜたりとけあわせてみて
もうひとつちがう色を
作ってみたいと思う人がいる。

画家の目はいつもどこをめざしながら
色を想っているんだろう。

絵の番組で、プルシアンブルーという
色について
いろんな方面から紹介していた。

もう番組の全体のことはどんな話だったのか
忘れてしまったけれど
ルノワールが、<その色はとてもあやうい色だ>と
云っていたという文章だけが
わたしの中にぽつりと映像として残っている。

わたしは絵を描かないので
その意味合いを奥深く理解することが
できないけれど、でも印象的に記憶されている。

じぶんが存在するずっと前から存在していた
<青い色>の前ではいつも目が立ち止まる。
無条件に反射してしまうのだ。

理由もきっかけもよくわからない。

色そのものだけじゃなく、
だれかがブルーとかたちづくるときの
唇のかたちと音にも、どことなく
こころが刺激されてゆく。

番組ではどうしてあの色があやういのかというと
<まぜてしまうとプルシアンブルーは
他の色をくってしまうからだ>
と、もうわたしにとってはじゅうぶんに
深淵なことを云っていた。

まぜるときけんな色について
どうしてこんなに気になってしかたないんだろう。
と想いながら、ついでだからと
想像してみたのだ。

仮にじぶんがどこかの何色かだったとして、
プルシアンブルーみたいな紺青色と
出会ったとしたら、
すこしずつとけあっているうちに
とけてりんかくをなくしてしまうのも
しあわせかなぁとふと想ったりした。

そういうことをふと想ってしまう
雨のふりだした青にほどとおい
空色の夜です。
そちらの空はどんなぐあいですか。
       
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