その一二〇

 

 







 







 
























  空に蔓 らせんのことば いまなげました 

でこぼこのみどりの突起をなるべく
傷つけないようにしながら
ナイフを入れると、まんなかに
綿に包まれた種がびっしり。

いつからかこの種をみるたびに
捨てないで、土に植えてみるっていうこと
してみたいなぁと思っていたので、
洗ってとっておきました。

苦瓜の種。
我が家は母が沖縄暮らしを体験しているせいか
ちいさなころの食卓にはいつも
ゴーヤ料理が並んでいました。

子供の頃は私も弟もあの青臭さと
苦さが苦手で、しぶしぶ食べていたので
なぜかその味覚は強烈に覚えていて。

おとなになってゴーヤブームが到来したとき
思ったよりも苦くなかった苦瓜を
食べてちょっと、肩透かしをくらったみたいでした。

あんなに広かった運動場がいざ訪れてみると
こんなにちいさかったっけとか
あんなに見たかった絵が
本物に出会った途端、思い描いてたトーンの色じゃない
とかって勝手に思ったり
あんなに好きだったのにねぇ何処でどうわたしは
まちがった感情で日々接していたんだろうと
気づいたり

そういうなんともいえない錯覚を
味わったみたいで
かなしいっていうよりもどっかに
忘れ物してきたような妙な感覚。

でもまたにがにがじゃない苦瓜も
親しみやすくなって、一日置きぐらいは
食卓に並んだりしてます。

そしてマイゴーヤ。
すっくすく育ってます。
種から育てるってなんかいいものです。
はじめっから知ってるんだよ
あなたのことって感じで。

ちょっと我慢して間引きして
いま素焼きの鉢ふたつにふたつのゴーヤと
ひとつのゴーヤが
つっかえ棒につるをまきつかせてます。

ジャックと豆の木みたいに大きくなぁれと
朝の愉しみが増えたこの頃なんです。
       
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