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お
な
じ
風
吸
い
込
ん
で
い
る
夜
の
余
白
に
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しゃぼんだま はきだしている 虹をかかえて
ゆっくりと、ためて
曲がって、てんうって
まっすぐまっすぐ
じわじわにじりよってふいに離れる。
いつも通っている書道教室でのこと。
お隣の生徒さんがが先生役になって
わたしの後ろに立ちます。
左手はわたしの左肩に載っけて
いっしょに筆をもって
たとえば<永>という字を
半紙に書きます。
筆を持っているのはわたしなのに
じつは支えているだけで
いっけん支えているだけのように
みえる後ろの人がほんとうは
主導権を握っていて、
半紙に墨が滲んでゆきます。
たったそれだけなのに
みんなでどきどきしている
とっても不思議な体験。
さっきまで<永>って字を書こうって
思っていわたしがいたのに
彼女と指を重ねて筆を持っているうちに
もうそこにしたためられる文字は
どことなくわたしのものではなくなって
いること。
あぁこんなふうにやわらかくコントロール
されるということがゆだねるってことなんだと
気づいてとても心地よいです。
左肩に置かれた手のぬくもりや
筆を持つ指の冷たさから伝わるなにかは
いつも予測がつかなくて
墨が半紙を滲ませてゆく時間と
共にあたらしい字が生まれてゆく
わからないけれどよろこびみたいなもの。
相手の呼吸が指先に届くと
呼吸が見えてきた感じがして
ちょっとだけその人を知ってしまった感じです。
ふたりでひとつの字を書いてるだけなのに
いつのまにかわたしはどこかにとけていて。
誰かと呼吸をあわせるそんな
じぶんリセットな時間がちょっと気にいっている
師走のどまんなかでありました。
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