その一三〇

 

 




 










 

















 

探してた 出口がゆれる 螺旋のいのち          

近くのお寺、遊行寺に初詣に行った。
すこし風の冷たい日で、三が日は過ぎていたので
もうすっかりいつものしずかなお寺の顔をしていた。

<面白い初詣>を期待していたわけじゃないけれど
このままお寺を後にするのはつまんなくて
本殿の白檀に似た匂いを吸い込んだとき
なつかしさがからだいっぱいに満ちてきた。
鹿児島のおじいちゃんの家の匂いがしていた。

正直にいうとおじいちゃんの家というより
おじいちゃんの着てた着物に染み付いていた
香とそっくりだった。

鼻が気分よくなったせいで気持ちも晴れてきて
階段を降りようとしたとき
犬の散歩をしているきれいな女の人がいた。
今年はそういえば戌年だから、初戌だって思っていたら
近くにいるちっちゃな男の子が犬を指さして何か訴えていた。

わたしは男の子の指を辿ってもういちど犬を見る。
よくよく見るとそれは犬じゃなくて
桃色の体をもったかわいい豚でした。

ヒールはいたみたいな足がとってもあやふやに階段を
降りてゆく。
その姿がとっても上品な太ったおばさまに見えてきて
母とわたしとしらない近所の男の子と3人でいつまでも
豚の斜になった背中をみながら階段を降りきるまでを
じっと見守っていた。

たえず鳴いている初豚は、わたしのこころにすっと
はいりこんできてあたかくしていったと思ったらまた
どこかへと森の奥の方へと消えてゆきました。

幸運の印ときいたことのある(彼女)が
わたしのたいせつな人々のところにも
すっと現われて、ハンカチ落としみたいに
そっと幸福を落としてゆきますように・・・。

どうぞ2006年も、うたたね日記をよろしく
お願いいたします。

       
TOP