その一三三

 

 






 







 



















 

みぎききで アナタガキザム どこかにかえる 

男の人が料理をしている姿は
なんか女の人が料理しているよりも
日常感がとれていて風通しがよいかんじで
すきなのですが。

この間、イラストレーターの黒征さんが、ふと
ブリのエラを水を張ったボールのなかで
ゆすぐように洗いながら
ひとことおっしゃったことば。

ちっちゃい頃、泥に足をつっこんだりするのって
セクシャルなきもちになったんやけど
これも似てる気がします(わ)
と関西のなつかしいニュアンスで。

味がいいとか栄養があるとか
そういう話はテレビの中でよ
く 聞くけれど、こんなふうに直のことばで
話したのを初めてきいた気がして
うれしくなりました。

イカの内臓とかを手探りで
腸をちぎれないように微妙な加減で
ひっぱりだすとき、イカスミが
あたりに飛び散らないように
慎重になってるとき
なんかわからないじぶんとの
一体感を感じる時を思い出しました。

魚をあしらうってみさかいもなく
からだに響いてくるような。

最近たてつづけに読んだ2冊の小説の中にも
いくつかの料理のシーンがでてきました。

聞いたことのないバゴーンとかサンパロックと
いった異国の調味料をトマトとかなすとか
インゲンたまねぎなどを入れてじっくり煮込んだ料理。

生きるか死ぬかのはざまにいる登場人物たちの
熱気がそのままに伝わってきて
たぶん口にしたとたん、からだのすみずみに
熱がフルスピードでゆきわたってゆくような
そんな想像をめぐらしながら
次のトラブルに備えるつかのまの安息のように
ひと呼吸おきながらページをめくります。

ひとりでなにかをつくり食べるときと
共に同じものを作り同じものを食べるときの
違いってなんだろうって思います。
ひとりだとしかたない義務感みたいなのに
でもふたりだとなにかをわけあっている
至福感があって。
たぶん、相手のからだがすぐそばにいてくれることの
感謝みたいなものかもしれないなぁと、
つらつら思うわけです。
お腹がっていうよりこころが満たされてしまうから
いつまでも忘れられなかったりする
そういう罠が仕掛けてあるんですね。
記憶していたくなるってほんとやっかい。
またひとつ発見です。

       
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