|
屋
根
を
う
つ
雨
の
リ
ズ
ム
に
で
じ
ゃ
び
ゅ
を
聞
く
|
|
夢の底 叩いたときの にじんだねいろ
ちいさなカフェで音がずんずんとかけめぐる。
かろやかなまるいかたちから、楽しそうに
はみだした音は、ちょくせつわたしのからだ
それもお腹あたりに届いてくる感じがする。
東急目黒線の、武蔵小山駅。
ここで昔からのお知り合いのよしこさんが、
所属しているバンドHAMASTERのライブをする
お知らせをもらって、いそいそと土曜日の夕方
ききにいった。
よしこさんの叩くパーカッションをはじめて聞いた。
ファルセットめくボーカルの男の人とギターやドラム、
ベースが重なりあう音と彼女の音が、そのあわいを
縫うように放たれる。
どれがどうなってどんなことになっているのかも
わからないけれど、客席に漂う空気が、まろくなって
ゆくのがわかる。
雰囲気のもうひとつの意味。
<地球をとりまく気体。大気。空気。>
大げさにいうともしかしたら、これかもしれないなって、
目覚めたような、気づいたような。
かもしだされたバンドの雰囲気って、なんだろうって
思っていたら、ひとりひとりのメンバーの人達が
からだのどこかしらから発しているらしい
空気のことじゃないかなって思った。
激しい曲の中にあっても、どこかしらゆらぎを
ふくんだようなやわらかい音の連なりが、カフェを
包んでいる。
他の場所で聞いた言葉を借りると、バンドって
ひとつの身体のような気がしてくる。
手も足も胸も首も背中もそして耳も、みんなが
機嫌よく機能しあっていると、そこからにじんでくる
音たちは、すこやかになってゆくのかもしれない。
あの時の音をいま思い出しながら書いていると
書いているそばから、ことばにきびしいよしこさんから
そのニュアンスってどういうこと? って
つっこまれそうかなと思いつつ。
ゆびさきから手のひらにかけてうねるように叩きだされた
弾んだ音色を聞いていると、そこにあるじぶんのからだが
なにかを携えていたとしたら、ぜんぶを宙に投げて
しまいたくなるような、あやうい魅力に満ちている。
人が原始にもどってゆくリズムってことばが、浮かんで、
そのリズムが打ち鳴らす彼方の音を想像してみたくなった。
|