その三二五

 

 






 






 



































 























 

千年の 祈りを掬う てのひらのなか

こんなふうに夜がきて。
夜の樹々は眠るように、息を潜めて。
のおとをめくる。
2011年のだれかやじぶんにおこった
出来事のかけらが、そこに記されている
しろい表紙の日記帳。

ことしのはじめ、1月のはじまりがどこか
決してそんなことはないはずなのに
かけがえのないとてものどかだったように
思えて来て、ずっとここにいられたらよかった
のにと思いながら。
ぺーじをめくる。

1月2月のあたりは、文字がしっかりたって
いるのに、3月になるととたんに
くうはくだけが目立つ。

ことばがとぎれる。
すきまをうめることばがみつからなかったのかも
しれない。
そこはやみなのか昼間なのかよくわからないけれど、
あらゆる感情をたちあげてゆく
すべがなかったのかもしれない。

<ちきゅうのうえに仮住まいしていたことに
きづいたんです>
<でも、仮住まいは仮住まいのさほうがあるんですよね>

テレビから聞こえてくる言葉をかきとめながら、
すこしだれかの生身のことばに甘えて。

誰かの季節はめぐる。
めぐりながらゆびがとまるページ。

<1時間幸せになりたかったら 酒をのみなさい。
3日間幸せになりたかったら 結婚しなさい
8日間幸せになりたかったら 豚をころしてたべなさい
永遠にしあわせになりたかったら 釣りをしなさい。>

開高健さんが20年ほど前のインタビューで
ほがらかに語っていらっしゃったことば。

そこに描かれている刻まれている時間は、遠く遠くの
沖にしかながれていない時のようなのに、
焦がれるようにこころに止まってしまったから
書き留めていたのかもしれない。

それからそれからまた夜が来て。
すっぽりとやみのなか。
やみのなかにもあかるい風穴があいている
ことを知って、まぶたをとじる。

とりとめもなくことしも綴ったうたたね日記です。
おたちよりいただいた方々にほんとうにこころより
感謝もうしあげます。
今年の祈りが来年のどこかにしずかにたどりつくことを
ゆめみて。
どうぞすこやかなよいおとしをおむかえくださいませ・・・。

もりまりこ

       
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