その四五〇

 

 






 




 




















































 

駆け抜けた 星とほしは 眠りに落ちて

 風の音。シャッターに立ち向かう音がして、なかなか寝付けない。
 風がまわってる。どこかへまわっているあいだは、こちらはおおむね静かだ。もう、どこかへといってしまったんだとおもって、眠りのどこか入り口あたりにさしかかると、その風はまたここにもどってきて、暴れだす。
カーテンを開けて、空を見る。
 どよんと曇っている。またたくまに雲が流れてゆく。

 この間、遊びでひきぬいた<星座おみくじ>のことをちょっとだけ思い出す。
 それは、<矢座>というもので、そこに書かれた文面をいますこしうつしてみる。
<1年間、あらゆる物事が、射られた矢のようにハイスピードで進んでいくので、いつも以上に
素早い行動、決断をこころがけて・・・(以下省略)>
とあって。
 この文章を読んでいて、なんとなく既視感があったので記憶を手繰ってみた。
 これはまるでわたしが幼い頃学校の先生や両親にいやというほど云われて来たことばだったことに気づいた。矢というよりブーメランだったのかと。
 早く決めなさい。早く食べなさい。早く解きなさい。スピードと無縁できたようなところがあるせいか眼の端を通り過ぎてゆくほどの速度を感じるものには、ただただ憧れるけれど。

 窓に雨粒がたたきつけるように速度をもってあたってる。夜があけてゆく。
 どんな速度もじぶんのてのひらのなかにはなくて、すべて駆け抜けてゆく。
 夜明け前、どこかの道でケンカするひとの声が聞こえる。ことばとことばは風にかき消されるけれどその想いの速度だけがこっちに伝わってくる。
 どっちでもいいけれど、けんか頑張れって思う。
 星も帰ってしまっている名づけられないような時間帯に、なにかを主張しているひとたちのその口調はとても速くて、もしかすると風が木々をざわざわさせている音なのかもしれないと、いちばんさきに耳が眠りに落ちて行った。
だった。


 
 

       
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