その四九七

 

 






 







 




















































































 

祝福の 風がそよいで 語尾がゆれてる

 西の方で雨がじゃかじゃか降っていた日。
 とてもとても懐かしい友人の?君からメールが来た。
 
<雨が降っているので、ちょっと思い出しました>
って文字を追いながら、だれかがすこしすきまのあいた時間に思い出してくれていることはうれしいなって。

 むかしコピーの学校にいっしょに通って、さんざんけんかもしたし、互いの作品について批評もしたし、たくさんたくさんばかみたいなこともした。

 むこうはちゃんとお父さんになっていて、わたしは誰かの親になることはなかったけれど。
 いまじぶんの置かれている立場とは別のところでじぶんを、掛け値なしにみてくれていることを、ちょっとありがたいなって思ったりする。

 空手をやったり料理修行でニューヨークに行ったり、ほんとうに困っているひとがいたら、いつでも駆けつけてくれる男の子。
 家のこまごまとしたことでも男手に頼れない母ともどもおせわになったことばかり。
 
 福岡伸一さんのエッセイを読んでいたら、
<心臓の鼓動がセミしぐれの声に、吐いた白い息が冷たい空気の中に、あふれた涙がにじんだ夕日に溶けていくこと>。驚きを感じるこころこそが大切なのだと綴られていた。
 
 その文章に触れながら?君が子供だった時を、想像してみる。小さなころから雨の音とこころを通わせていたのかもしれない。そんな日常を遠い場所から運んできてくれたみたいで、わたしは福岡さんの言葉を彼に贈りたいなって思った。

       
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