植物に 水そそぎつつ 鼻歌うたう
いまの、うたってなんだったっけ?
うた? うたってなによ。
ちゃんとじゃなくって、鼻歌みたいなの歌ってたでしょ。
鼻歌なんて、ぜったい歌わんって。ありえん。
その後、ちょっと照れてみたいに咳払いしてすっごい静かになった。
この凪はなに? っていうぐらいのしじま。
どうして隠すのかなって思う。
はずかしいことがばれたときみたいに、隠すのって、ねぇ。
とか思いながら、鼻歌は聞いたひとも、確かめちゃいけないんだと、すこし反省した。
しずかに耳のなかに閉じ込めたら、そのまましばらく寝かせておくのがいいのかもしれない。
と、おさめつつもでもねとかって思う。
カラオケわたしは行かないけれど、カラオケはみんなにあんなに聞かせるのに、やっぱり、へんだとおもう。
だって、鼻歌だよ。
すきなんだよね、この歌でいいじゃない。
その歌にも失礼だと思う。
夜、ひとりで『オペラ座の怪人』をみる。
みるっていうより聞くが近いかもしれない。
主人公のファントムが、柱の陰でひとりで、クリスティーナを想って泣きじゃくりながらうたうシーンに、もっとしゃがんでしまいたくなるぐらいほろっときた。
それで、ふいに思いつく。鼻歌って、すごく楽しいことがあったときのイメージだったけど。
もしかしたら、じぶんを鼓舞するときにも、息を吐くように、こぼれてしまうものなのかな?
と。
だから、やっぱり、あれを聞いた時は、黙ってしずかに、通りすがりのように耳のなかに棲まわせるのがいちばんいいんだ、と。 |