その五四二

 

 





 







 




































































































 

かたむけた 首の角度が なにかに似てる

PR誌をぺらぺらめくっていたら、対談のページで、指が止まる。そこにはホストとゲストのプロフィールが載っているのだけれど。彼らが召し上がった、食事やデザートなども記されている。
その日のそれは「海の幸のマカロニグラタン」だった。ちょうど夜ごはん前だったからか、そのタイトルに食指がうごく。
ついついバックナンバーを探してみたくなって、ぺらぺらとめくる。
ランダムに何冊か本棚から抜いてきて、メニューをみてみる。
むかしむかしの12月は「オムライス」と「ミートクロケット」だった。
でもなんとなく期待していたものとはちがって、「海の幸」ほどは、お腹がすかなかった。

メニューも、つまりタイトルなんだなって思う。
なんとかかんとかののなんとかかんとかに、ついつい呼ばれてしまうんだろうなって。

そんなことはさておき。
この間フェルメールの「牛乳を注ぐ女」の絵をみた。
何度かみかけているのに、こぼれでているミルク壺からすこしだけしろく流れ出ている牛乳はどんな味がするんだろうと、はじめて思った。
青いエプロンとリネンのキャップをかぶったでっぷりとしたメイドさんが注ぐ、ミルク。
あのあとこのミルクはどこへいくんだろう。
左の窓からさしこむ光もなんども目にしているのに、あ、あたたかなひかりだってあらためて思う。
そしてなによりも、だれかがなにかを注いでいる仕草って、にんげんの行為のなかでなつかしいなにかを、思い起こさせてくれるものなのかもしれない。
いまちょっと、フェルメールをまんなかに置いて、過去の時間をよみがえらせてみた。
いつかフェルメールをまたどこかでみるとき、きっとあの人が、注いでくれたミルクのことを思い出すんだろうなって思いつつ。

       
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