その五八二

 

 






 




 




















 

胸の奥 いつかはがれる 付箋をそっと

雨がふらないと思って出かけたから、店の外にでて
思いっきり屋根を雨が叩いている音に、気づいて、
予報のことを信じすぎていたことに、気づかされた。

大粒の雨を髪に受け止めながら、あたらしい歩道橋を
渡ってコンコースを走った。
店を出て傘を持たないひとたちは、雨宿りのように
雨が止むのを待っていた。
こういうときわたしは待てなくて、とりあえず走って
しまう。走っているさなか、この街にはじかれている
感じはなくて、馴染んでいるその輪郭がうれしかった
りする。むかし知らなかったこの街の雨の中を傘も持
たずに走っているよと、俯瞰してしまう。
とはいいつつ街にいるときは、この街がすきだけど。
しばらくすると早く帰りたいなって思ってしまうし。
いまこうして街のことを思い描いていると、すごく
あの街のあの通りがすき、はやくあそこに、行きたいっ
て思ってしまう。

濡れた髪を乾かしながら、ふわっとつけたテレビの
中に、デンゼル・ワシントンのことばがそこに
あった。
<Fall forward。>
fallもforwardひとつひとつの単語は知っていたはず
だったけど。
そのふたつがいっしょになると。
<まえのめりで行こう>になるってことを知って。
ことばとそのことばを発しているひとが、ずれること
なくぴったりと重なって見えたし、聞こえた。
彼がそういうふうに今まで全力でやってきたんだろう
ことを想像させてくれて気持ちがフォワードめいてきた。

つい最近、受動的じゃだめなんだ読み手も作り手もって
ある人のTwitterで呟かれていた言葉を見て、すこし
あたまがつんとゆさぶられたばかりだったので、とっても
響いてくる。

12月の真ん中すぎになると、こうして誰かの呟いたり
綴っていたことばを日記の中から探すのが、この季節の
じぶんだけの恒例になっている。
デンゼル・ワシントンのその後の言葉は、
<しくじった試みもすべて成功への足掛かりとなる>
って続く。
成功っていう言葉とは縁遠いけれど、前のめりは、好き。
ここ数年あたり、前のめっていけるなにかをみつけた
ことがいますこしだけうれしい。
フォール フォワード。
なんとなくフットボールのルール用語みたいで、語感が
潔くって好きだな。

いつも、だれかが、ここに訪れて読んでくださっていると
思いつつ、日記を書いています。
ことしも、だれかが目を通してすこし笑っていただけて
いたら、幸せです。ありがとうございました。
2019年も、あとすこしですが。
読者のみなさまにとって、この12月がこころゆたかで
すこやかな日々でありますように。

もりまりこ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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