その六一二

 

 






 







 











 

ほらきみの 背中に言って いるんだよ君に

窓を開けていると子供の声が聞こえてくる。
たいてい、マスクの下で声くぐもらせながら大声で
しゃべっているのが聞こえる。

今の時代の子供は大変だって正直思う。

私たちの時代もいろいろあっただろうけど。
あ、そういえば祖母が孫であるわたしが学校に
もっていかなければいけない道具の多さに
半ば、あきれながら

今の子たちは、覚えることもたくさんで大変だね
って言っていた。

時代は巡るんだ。

なんか、マスクをちゃんとして歩いている子供達を
みていると、無条件にえらいなって思う。

わたしだったら、ちゃんと守れていたかな?って。

子供の声がする。

ちょっとなじられているような声。

ひとりの男の子が、ばっかじゃねえのって誰かに言った。

そしたら何歩か遅れたみたいな感じで時差があって。
ひとりの女の子がが、抗議するように言った。

ばかじゃないもん。わたしばかじゃないもん。
だって、ちゃんと自分のあたまで考えたんだもん。
って、なんか泣きそうになりながら。
男の子を追っかけても、言うべきことは言うっていう
姿勢で、走りながらそう叫ぶ女の子の声が聞こえた。

わたしに子供はいないけど。
ひとことで済まそうとした、その男の子の批判に
ちゃんと、全身で答えているところ、
なかなかいいねって思う。

見てはいないけど、ちいさそうな体をふるわせながら
力の限り抗議してゆくその姿はかつてのわたしには
ないものだった。

批判された時、呑んでしまうのかちゃんと抗うのか。
そういうことは、やっぱり小さなころからどこかで
身についているほうが、のちのちいいよって正直
今の年になってみてわかる。

今頃になって抗いたいときの方が増えてしまったけど。

ちいさなあの子を見習いたいなって
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