その六三二

 

 





 





 









 

世の中を 歩いている時 君を感じた

むかし好きで観ていた番組。
駅や空港にピアノを1台置いておいて
ご自由にお弾きくださいっていう
駅ピアノ・空港ピアノが時々再放送
されているので観てしまう。

おかしなものだけれど。
この病気が世界を駆け巡ってからの方が
どこかに旅したい想いが募っていた。

ウイルスが蔓延する前まではとりたてて
行きたい場所はなかったのに。

行けなくなった途端に昔訪れた
イタリアにもまた行きたいなって思ったり。

行動を規制されると行動したくなるのが
ひとなんだって改めてそう思う。

パレスチナから帰りの音楽の先生がピアノを
弾いていた。

イーグルスの「デスペラード」。

世界各地を訪れて音楽の授業をしている先生だった。

みんな自分と向き合うことに疲れていたりして
それを音楽で癒しているのだという。

デスペラードの曲は、どこかひとりぼっちの
誰かに向けて歌われた歌詞だった。

一人きりで世の中を渡って行こうとしなくていいよ
君は誰かに愛してもらいなよ。

そんな歌詞だったけど。

この歌詞を今聞くとほんとうに子供から
大人まで誰の心にも響くような気がして。

現にわたしも聞いた途端メロディのせいも
あるけれど。
訳詞を目で追いながらその先生が語りかける
ように歌ったその歌声に涙していた。

心に響く歌声って必ずある。そういう出会いを
した時はじぶんだけの大切なものをいれておく
箱の中に入れてみたくなる。





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