その六三五

 

 











 








 

たいせつな ことばを入れる ひきだしひとつ

思っていることの半分も言葉に声にする
ことがずっと難しいわたしは、ちゃんと
伝えられなかったことをいくつになっても
くよくよ悩んでしまうことがある。

たいてい週に何度かはそんなことをやらか
してしまうのだけれど。

いつも読んでいる折々のことば。

今も紙の新聞読んでいるんですねって
驚かれるけれど。
紙の新聞はなくならないでほしい。
なくなってしまったら少しさびしい。

そして時々切り抜いている。

<なにかを うまく あらわせないことが 
あっても、あわてず どうどうと しいていて
ください>

これはわたしのことだと思った。

たいてい上手くいかないことが綴られて
いるものはわたしのことだと思う節がある
けれど。

これは特にそうだった。

美術家の森村泰昌さんの絵本からの引用
だった。
その新聞コラムの冒頭はこんな感じだ。

<あなたは他人をたやすく打ち負かすほど
豊かな言葉を持っていないかもしれない>

確かにそうだと痛いほど頷きながら、
読み進める。

夕暮を目にした時や、大切な人の死に直面
したときに言葉にできなくても、それは

<なにより、ことばのおもさや こわさを
かみしめている>ということだから

しょんぼりしないでいいよ、どうどうと
していてねって子供へのメッセージ
だった。

子供じゃないけれど、これはとても宝物に
したいものが詰まっている引き出しの中に
入れておきたくなった。





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