その六四四

 

 




 






 






 

たたかいが 体と心に 刻まれてゆく

もう定番ですが、「心が折れそうになる」という、
言い回し。
あの言葉をはじめて聞いた時に井花さんという、
先輩の方のことばを思いだした。

好きな人がが生まれている時から背負っているものを
わたしも背負っていけるのかどうかで悩んでいた時に、
いつもフラットなたたずまいの井花さんが
言ったのだ。

「もりさん、折れなければいいんですよ。折れなければ
ぽきっと折れないでいてくれたら、ぼくらみんなうれしい
です。」

そう言ってくれた。
それでもわたしはザンコクにもわたしが折れてしまう方が
楽だと思っていたから、折れる方を選択したがっていたので、
じゃあどうすればいいんですか? 
ってなきついた。

それでも井花さんはうろたえることなく、
「だから、しなればいいんです。竹のようにしなってください。」

そんな詩人のような心を持った井花さんに言われた言葉を
いま思いだしていた。

そう、しなればいいんだ。
折れないでしなる。
くさくさせずにのけぞるぐらい心をしなってみせる。

井花さんはいつも誰かを静かに励ますことが上手な
人だった。

あの時も支えてもらった言葉だったけど、
こんなに時間を重ねた今も響いてくるなんて。
ほんとうに誰かからもらった言葉って
かけがえないし、記憶しておいてよかったと
思える日が来るものなんだなって。

井花さんにいつか言えるといい。
あの頃よりもわたし、しなるようになれました。
時間はかかりましたがほんのすこし
竹みたいな心になれました、って。

 



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