その六六六

 

 





 






 





 

あなたとは いちばん遠い 距離だと知った

あなたという言葉。
いつだったか、ある方と
喋っていてわたしがいくつか
キャッチフレーズを提案したなかの
「あなた」という言葉がなんだか遠い気が
するんですって言われたことがあった。

彼方という意味もあるあなただけれど。

そこまで遠くないけれど、どこかしら遠いと。

わたしとあなたのあなたじゃなくて。

目の前でいわれるあなたとは違って。

ひとつの文章、たとえばキャッチフレーズで
使用される「あなた」って、呼びかけられても、
読んでいるひとはあ、わたしのことねとは思わない。

あなたは、あなたであって、あなたでない。

そんなこと、知っていたはずなのに制作の現場で
気づかされた。

いわば、あなたはみんななんだなって。

わたしが「きみ」という二人称を使う時はぼんやりと
誰かを思い浮かべて使っていることもある。

世の中の小説の中や手紙で呼びかける「あなた」や「きみ」は
例外だけど。

それ以外の「あなた」や「きみ」はもうほとんど、「みんな」って
いう意味で。

あなたという名のみんなは、使えば使うほど、特定のだれかには
届いてくれない。

○○な時間をあなたに。
たとえばこういう、文章があったとしても。

読んでいる人はほとんどわたしに呼びかけて
いるんだとは思わない。

今頃になって「あなた」はほとんど誰にも
届いていないことを覚えた。

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