その七〇九

 

 






 





 





 

通り過ぎた 過去の時間が 駆け抜けていく

3coinsをぶらぶらしていた。
わりとここにある雑貨が好きで
家に帰る前に立ち寄ったりする。

その時デート中らしい二人組の
うちのひとりの男の子がいた。

女の子があちこちみてまわって
なかなか男の子のそばに
戻ってこなかったみたいで。

見るともなしにそわそわと
視線を店内に注ぎながらスマホケースの
ところにいた彼のもとに、やっと彼女が
戻ってきたらしい。

彼女はすきなものをみつけたらしく
そこそこ満足そうだった。

するっと彼のそばに来た彼女を見て

「あ、消えたのかと思ったよ、よかった」
って言った。

かわいいな男子って思ったけど。

彼女は「消えないでしょ」みたいな
リアクションが、けっこうCOOLで
かわいいし、かっこよくて。

その距離感がいいなって思った。

消えたのかと思ったと思わせる彼女は
そこそこ自由で、自在で。

ふたりであってもしばられずに生きているん
だなって思ったりした。

ぞっこん過ぎないんだなって。

この過ぎないって意外と人間関係
大事で。これしかないかもしれない。

かつてのわたしならいつもふいに居なくならないで
ねってどこかで思っていたのかもしれない。

それだけ、なにかにすがりたい
そんな季節を生きていたのかもしれない。

ひとりであることをまだ愛せなかったから
だれかに愛してほしかったのかもしれない。

たったひとことの会話でなにも
わからないけれど。

とおりすがりの恋人らしき人たちに
ほんの一瞬かけぬけた想いは
またどこかのわたしの記憶に
触れたような気がした。

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