いまでも耳に残ってるひとつのうた。
声じゃないのにメロディが奏でられてる。
くちびるをすぼめてそこに息を吐き出すだけで
とたんにからだのいちぶが楽器になることを
知ってしまった不思議に出会ったのは
わたしがちっちゃな頃でした。

どこのだれだかわからないひとりの背の高い
おとこのひとが吹いている
♪線路はつづくよどこまでも。
幼稚園であきるほどなじんでいたその歌を
ずっと聞こえなくなるまできいていたジャングルジムの上。
<どこまでもつづく線路>とおとこのひとの遠くなるくちぶえ。
おわりのない線路にぐるぐると思いめぐらし
くちぶえはきこえたすぐそばから
たちまち消えてしまうことをおぼえて
わけもなくこわくなってしまったあの頃。

いまでもときおり聞こえてくる雑踏のくちぶえは
あのみしらぬおとこのひとのそれとは違って
すこしお酒の匂いがまじっていたりするのですね。
もうにどときくことのできない永遠のくちぶえ。
<一期一会>と<くちぶえ>はとても似ているそんな気がしています。

       
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