その参




















 

くっついては、はなれてみたり。
いつのまにかちっちゃなひとつが
ふくらんでどれよりもおおきなひとつに
すがたを変えてもっと大きくなりたくてとなりの
だれかをいざなってみたり。

雨の日に窓を開けてみるのが、 その匂いを感じることが
好きだと綴られたすてきなおんなの人の
エッセイをこの間、読んでいた。
その話を知って思し出したのは今年死んでしまった
黒猫のことだった。
彼はとにかく窓に伝う雨をみるのがなにより好きだった。
まろやかなその背中はいつもなにかを隠してるような
知ってるようなそんな姿でわたしたちをしなやかに
拒んでみせた。
雨を映す出窓はもうあの日からずっと空席のままだ。

先日夕刊でみかけたゼブラゾーンに咲く傘の花。
あんなに俯瞰した風景を眺めたのははじめてだったので
今もとても印象に残っている。
そして、少しだけわたしは想像してみた。
みんなひとりひとりが傘の中に棲んでいるのに
どしゃぶりのなか、ずぶぬれになってもかまわず
走り抜けてゆく女の人をみかけたらどんな人よりも
そのひとばかりを目で追っかけてしまいたくなるだろうなと。
誰かの傘をあてにしないぬれるがままに過ぎてゆく。
だいじな誰かに逢いに行くためだけにまっすぐなひと。
そんなカンカン娘みたいな匂いのする
おんなのひとにわたしは憧れる。

       
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