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水
の
な
い
プ
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ル
の
底
に
枯
葉
が
泳
ぐ
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いまなんじ? あの声はだれ? 零れるチャイム
茶色い木目の薄いテーブルの上には
殻になった落花生がいくつも
転がっている。
編み目模様の欠片があちこちに
弾けたままで
小鳥が食事した後のような
散らかりかただ。
壁に掛けてある鏡には
間接照明に照らされた部屋が乱反射して
べっ甲飴色に似た光が映り込んでいる。
この部屋には多分誰も居ない。
誰もが出かけてしまったあとの
ような感じがする。
いまわたしが訪れているのは
19年も前に愛読していた雑誌の92ページ。
誰もいない部屋にはシロヌキで
詩が綴られている。
<何もかもいっぺんにわかってきたのだった>
そう綴られたたくさんのなかの一行に
目が止まる。
少し前に繙いていたときもここが好きだなぁと
思っていたのに
いまはもっと好きになっている気がする。
詩の中の主人公の男の人が、じぶんが暮らしてきた
時間を積み重ねながらふとなにかを突然に
わかったのだと<あなた>に云う。
ただそれだけの詩なのに
わたしの中ではこの部屋のあかりのように
ぼんやりと思いの輪郭がにじんでくるのだ。
なにをわかったのかはわたしにはわからない。
でもこの部屋のテーブルの上に残された
落花生の殻をみてわたしが少しだけわかったのは
たぶんこの男の人は
落花生を齧っている途中で
<なにもかもがいっぺんにわかったのだ>
ということと、
そして片付けることさえもどかしくって
<あなた>に伝えに行ったのだろうなという
そんな、部屋に残された空気とえとせとらだけだ。
からっぽの部屋にさっきまでいたような
人の気配が濃く漂っている一葉の写真が
なぜだか、六月の今日に限って
わたしをちりちりと刺してきた。
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