第二回酒折連歌賞 アルテア賞選評

アルテア賞最優秀


問4.【さみしくて高くこぎだす天の川まで】

<ぶらんこ>の揺れが描く弧の大きさと高さをイメージするごとに、さみしさまでもが加速してゆくような切実な句に共感を覚えました。<さみしくて>とストレートな投げかけが一息に<天の川まで>に続くスピード感 がとても魅力的な句です。 また問いのひらがなに呼応するような句のたたずまいも新鮮な発見でした。

アルテア賞

問1.【鈍色の冬空を射る椿の紅さ】  

<冬空>に束の間の光を投げかけているようなコントラストが鮮やかな 色の対比が印象的です。<ぶらんこ>の揺れのはざまに垣間見たような一葉の絵はがきのような1句です。

問1.【夏空に流れる星の命あるまで】  

流星の落ちてゆく速さのなかに閉じ込められた永遠性とそれを仰ぎ見る 人の<命>のはかなさ、そして問いのゆるやかさとの重なり方のいくつも の速度のずれが鮮やかです。

問2.【虹の先超えたところに指先触れた】

現在をはるかに感じさせてしまう、童話の世界の1ページをめくって いたときに出合いがしらしたかのよう。そんなイメージ豊かなことばのつ らなりが楽しい1句です。

問2.【パンドラの箱より洩れし希望の明りか】

世紀を越えてもそこにかすかな祈りに似た思いが込められているようで す。問いかけのどのことばからも距離感を保ちながら、期待と願いが<パ ンドラの箱>と<希望>にすなおに託されています。

問3.【想えば遠くと中也の詩に馳す】  

<ぶらんこ>とともにからだを遠くに放ちながら、過去の時間に戻るよ うに少し昔の時間を生きた<中也の詩>にじぶんをそっとかさねてみせる。そんな思いの揺れがまっすぐに表現されています。

問3.【路地裏の水の溜まりを泳ぐ夏雲】

誰もが目にしたことのある<水の溜まり>をスクリーンに見立てた仕掛 けによって、まるで映画のワンシーンのように描かれた1句です。問いの ゆらぎとのつながりのバランスも魅力です。

問4.【湖の水面に映る月もぶらんこ】

問いの<ぶらんこ>との韻を踏んだリズミカルでとても若々しい作品。 問いから遠く離れているようでいて現実と仮想の揺れがひとつになった不 思議な趣にひかれました。

問4.【ハーモニカ吹く少年の指定席なり】

遠い記憶の風景を思い起こさせてくれるようなそれでいて、どこかしら 現代の放課後の少年像に出会ったような詩情豊かな1句です。問いの<ゆ らりゆらりと>にふさわしい時間の流れを感じさせます。

問4.【透明なロープを月に真夜中越えて】  

<月>からまっすぐに放たれた<透明のロープ>を手探りしてでも思いを 遠くへとばしてみたいという若い作者の想いが<真夜中>の闇ととけあう 幻想的な1句です。問いの<夜>がいっそう際立つ作品です。

第二回酒折連歌賞アルテア賞総評

「5/7/7」という限られた句の向こう側に見える、見知らぬ町に暮 らしていらっしゃる方々の等身大の生活の中から生まれる言葉の数々。そ れは遠いどこかの誰かへ放たれた短い手紙のようでもありました。今回の たくさんのみなさんからの応募作品はまるでそんな心の形を読ませていた だいているようでした。   問いかけの片歌にしずかに寄り添ったり、また時には鮮やかに突き放し たりと、彩り豊かな作品に出会えた事を今幸せに感じています。問いと答 えがひとつになってピリオドを迎えるのではなく、そこからまたひとつの あたらしい問いかけが誕生することによって、すこしずつ歌が連なってゆ くようすは、そこにもうひとつの時間が存在しているかのように思える貴 重な体験でした。   そして《アルテア賞》では、まっすぐに映像が浮かんでくるような10 句を入賞作品とさせていただきました。   視点の鮮やかさ、日常の風景をすこしアングルを変えてみたときのあた らしさなど、平易なことばのなかにも発見が隠されているそんなあらたな 命を携えた10句の片歌と、はじめて巡り会えることができましたこと、 ほんとにうれしく思います。

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