その九九

 

 

 






 





 
















 

カーラジオ あふれるひとり こぼしたままで     

あぁきょうはついたちだって思うとき
なんか、ほんのすこしだけ、あたらしい気持に
なっている気がする。

いっぴ(いちにち)生まれのせいからなのか
よくわからないけれど、
たとえば、気持の変化を折れ線グラフにでも
してみたら他の日よりも若干気持の数値めいたものが
高いような。

ベッドに横になっているときは
もうたいてい次の日だから
時報と共に始まる午前零時あたりの
ニュースのおさらいをしているときなどに
時折そういう気分になったりする。

なったりするのだけど思うとすぐに忘れてしまう。

九月になってはじめての日はいたって
ふつうの日だったのだが、次の日に
歌を詠むすてきな女の人から、
贈り物をいただいた。

郵便受けに<銀座並木通>と<04・09・01>の消印が
押された封筒が入っていて
その中にはクールなハート模様がデザインされた
パッケージに包まれた
ハンカチがいちまい同封されていた。

グレーやすみれ色の花びらのアウトラインが刺繍されて
その花のまわりにはスパンコール調の
ビーズがちりばめられている
とってもキュートなハンカチだった。

手のひらに乗っけて、わぁあたらしいハンカチって
思いの真ん中にいながら
これってあたらしい服を着た時よりも
どこか気持がはらはらしていいなぁと思った。

そしてそれはいつかどこかで誰かのものになった時点で、
きっと親密な感じを醸し出してしまう
ふしぎなアイテムなのかもしれないなと、
思いを巡らせたりもしてみた。

そしていつのまにかふるいハンカチのことまでもが
暗闇の中で灯すジッポのライターみたいに
しゅぼっしゆぼっと浮かんでいた。

誰のなかにも、ハンカチいちまいぶんぐらいの
甘い記憶ってものがあるんだろうなぁと、
なにかを思いだし、思いだしてみたものの
せつなくなってきて、なぜだかいまはなくしてしまった
あのハンカチ、いまごろどこでどうしてるんだろうと
たずねびとの気分になっていたのでした。    

       
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