その一五五

 

 







 







 









 

ゆきずりの 夜の歌です コルクのふたを

星の砂や貝殻がちいさな筒状につめられた
瓶が箱の中からいくつか出てきた。

まだ幼かったときに沖縄に住む親戚の
おじさん達がおみやげに買ってきてくれた
ものだった。

まだとってあったんだと思いつつ
この捨てがたい思いはきっとこの瓶の
せいだなっておもった。

たとえばむきだしの星の砂(ありえないけれど)や
貝殻、ビー玉だったら、もっとぞんざいに
扱ってしまってるんだと思う。

硝子の外側にははかりしれない世界が
広がっているのに、この内側は
どこかで均衡が保たれている感じ。

あっちにいっちゃうときっと果てしないけど
こっちはまだ限界が目の中に見えてる安堵感が
瓶の外と内にはあるような気がする。

でも、いつかうっかり指をすべらせてしまえば
たぶん外と内をへだてていた硝子のバリヤーは
こなごなになって、中に集っていたものたちは
バランスをいっきに崩してしまう。

そんなあやふやさも含めて私は瓶につめられた
ものたちを捨てがたいんだってことに気づいた。

こんなにおおざっぱな人間が瓶につめられた
ものたちを好きだなんてすっごい
バランス悪いなぁと正直おもう。

思うのだけれど、逢ってる時は近いのに
離れてしまうとやっぱり遠い大好きな人のように
私は瓶の中のものたちを近くにちりばめながら
触ることもせずにずっと同じ距離感で憧れて
いたいってことなのかもしれない。

身辺整理ってゆるゆるだった気持ちに少しずつ
とろみがへってくみたいで、あらためていまのこころの
状態に気づかせてくれる唯一の方法のような。
そんな気がしてきました。

       
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