その四六七

 

 






 





 






























































 

まぼろしの 空のどこかを 天使と犬が

 ポストに届いていたあったかくなったはがきは、とても淡い色で描かれた、天使が犬たちに囲まれているもの。
 まぶしい日差しに照り付けられたポストの中でずっといたんだなって思いながら、そのポストカードを手にしたまま、玄関を入った。

 8月になると、新宿の伊勢丹で開催されている寺門孝之さんの個展におじゃまするのが楽しみになっている。
 「天使と光」そのタイトルが示すとおりに、会場はどこも天使と光にあふれていて、どこから目にしていいのか、どきどきする。
 好きな絵の前にゆくと、そこにあることはわかっているのに、すこし緊張する。
 絵の前にいるじぶんのことが気になって時々集中しずらくなるのだけれど。
 なぜか寺門さんの作品群にであうと、そこに描かれた浮かんでいるような天使たちに、そこを見透かされて微笑まれているような気がする。そんなこと気にしないでっていわれているような気がして、やがて落ち着いてくる。

 ポストカードと同じ作品を、フロアで目にしていると、あの日描かれていた、天使の両サイドを囲むアフロヘアのような犬が、ほんとうはSUNDOGとMOONDOGであったことに気付く。
 サンドッグ、ムーンドッグ、太陽や月の両側にあらわれるつよい光、幻日と幻月。それが犬の姿となって愛らしく、こちらをみている姿と対峙した。
 その犬たちは足元にまで、まぼろしのようにそこにいて、すべてが天使が放つ光の中に包まれていた。
 フロアをあるきながら、天使がいる空間って、なかなかいいなって思った。なんとなくなにかに包まれてる時間っていうのは、むかし鹿児島に帰省する度、玄関先で祖父がしてくれたハグのことを思い出して、しずくのような淡い気持ちでいっぱいになっていた。
 

       
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