その一六〇 行き先は あやふやにして 冬バスに乗る 一月十日 その一六一 さびしいって まなざしを宙に はなつひとたち 一月二十二日 その一六二 ころがって たどりつくまで ふしぎのままで 二月二日 その一六三 てのひらに かくしたものを むかしに放つ 二月五日 その一六四 伝言は ひかりのなかに まぎれてしまう 二月十九日 その一六五 階段の 背中ちっさくなる しんとする胸 三月六日 その一六六 すわってる ふたりのすきまに ルビうってみる 三月十五日 その一六七 ねころんで わらったあとに つつっとなみだ 三月二十八日 その一六八 空うつつ らせん状に 犬吠える午後 四月六日 その一六九 満月に たてつくように ばうばう鳴いて 四月十七日 その一七〇 ゆれながら 春の夕陽が こぼれるフロア 四月二十六日 その一七一 海行こう 手首がしっと つかまれている 五月二日 その一七二 はてしなく まあるいものは いつも遠くて 五月十一日 その一七三 泳ぐ蝶 あけすけに追う こどものゆびと 五月十八日 その一七四 老いてゆく 雑踏のガム 錆びた標識 五月三十日 その一七五 おめでとう しずくささげて ひゃくごじゅうねん 六月十三日 その一七六 そこにいた あまいきおくが にげてゆくよる 六月十九日 その一七七 昼下がり しらふなこころ ひとつのこして 六月三十日 その一七八 くつひもを むすぶときの せなかの曲線 七月六日 その一七九 鳴っている だれかの部屋の すてんばいみー 七月十七日 その一八〇 ファインダー 覗く人 覗かせる人 七月二十三日 その一八一 ひとつぶの 音がからだに まぎれてゆく夜 七月二十九日 その一八二 れのゆびと みのゆびふぁのゆび つめたくあてはめて 八月八日 その一八三 アスファルト こぼれたままの てんてんつなぐ 八月二十二日 その一八四 ぶしつけの ネオンのなかで 闇をまとって 八月二十九日 その一八五 くるんでも くるみきれない ことばのかけら 九月七日 その一八六 すれちがう 夏の雑踏 凪になるひと 九月十二日 その一八七 過ぎてゆく 夏の何処かに 栞はさんで 九月二十二日
その一八八 シャツの胸 しずくしずくと 透けてくこころ 十月一日