その六八四 |
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ひ |
リミットを はずしてみせる ギリギリのひと 『川っぺりムコリッタ』荻上直子著。 できうる限り限界を生きているような街がいい。 ギリギリを感じてさえいれば生きる実感が湧く そして彼を拾ってくれる人たちがいた。 北陸にある塩辛工場をあっせんしてもらい、 僕は僕を巻き込んで回っていた大きな歯車から この気持ちに少し馴染んでいた。 何度かイカを山田が捌いているシーンが何度か 手袋をしていてもぬめっとした感触が手に それをひとつずつ内臓や頭や中骨、足などに 鬱を患っていた時に、イカの内臓を捌いて、 気持が動かないものを好んだから、生身の 生き生きと生きているものには触れていたく でも台所で夕食を作るためにイカのはらわたと すぐに元気になったわけではないけれど。 生ものと格闘していると、指にふれるイカの この小説で山田がイカの塩辛工場に勤め始めた 山田には、ご飯を上手に炊くことができるという ああ、なんていうことだろう。うまい。うまい米は こんな幸せなひとりごとを漏らすようなところ。 |
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