その六七三

 

 





 






 





 

蜘蛛の巣 つむいでいくよ 君は世界

好きなものを「推し」ということに
いまだ慣れていないのだけど。

わたしの「推し」ってなんだろうって
考えていた。

けっこうあって、迷った。

嫌いなものの多い人生だと思っていた
けれど。

意外にあるのかもしれない。

歌人の穂村弘さんがたぶん永遠に好きだと思う。

彼の言葉が好きだ。

これまでなんども掬ってもらってる。

2017年の手帳から、はらはらと落ちてきた
紙切れ。

その年の4月頃のものだった。

なにも書けないときに、わたしの目の前に
現れてくれた穂村弘さんの言葉に救われた。

いや掬ってくれた。

それは本を読むということや言葉について
語られていた。

読書は誰かが、原風景や心象や出来事や現象を
言葉に置き換えて世界をみせてくれていると
綴られていた。

「私がイメージしたのは蜘蛛(くも)と糸と巣の関係です。
蜘蛛が自分の糸だけで編んだ巣の上で生きるように、
我々も普段は意識しないけど、自らの内なる言葉(糸)が
作り出した世界像(巣)の上で生きているんじゃないか。
つまり、人間は言葉の介在無しに世界そのものを直(じか)
に生きることはできないんじゃないか、と。」

穂村弘さんの「内なる言葉の塊」より。

言葉のない世界に生きたいと思うことも
あるけれど。
そんな時でもまた言葉を手繰り寄せている
だろう。

TOP