その六九四 |
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おとずれは 音がずれてゆく 雲から雲へ 空がとつぜん、きれいに見える時がある。 ただ、雲の形がちがってそのレイアウトが 空に心はないのに。 いつか聞いたことのある坂本龍一さんの 「みんながざわざわって客席がざわつき ひたひたとしーんとして。 曲が終わって最後の音符を引き終えて 柔らかなきれいな鼻濁音の声で 『bibo no aozora』 を聴いていた。 イントロが始まると、わたしのこころも 音の階段をすこしずつ上ってゆく感じが イタリアの人たちの耳やからだにどんな作用を 記しつつそれを感じているのは今の気持ちで おとずれという言葉。 むこうからなにかが運ばれてくる。 音がつれてくる。 だれかのゆびで震わせたり響かせたり。 余韻が耳におとずれるとき。 余韻のいちばんさいごの終止符を打つ時の あたりのしずけさは、さっきまで聴いていた きもちが順々に折りたたまれてゆく たぶん何かの訪れを待っていたのだなって |
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