その六九六 |
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まあだだよ いま帰るよ 一瞬の子供 もういいよ、まぁだだよって近所の 出窓近くで仕事しているといつも彼らの もういいよ、まぁだだよ。 声がどんどんちいさくなって、目隠しして これは小さい頃のじぶんの記憶かもしれ 大人になってしまった今。 もういいよってじぶんは思っても、たぶん もういいよ、まぁだだよって。 もういいよって、ほんとうはなにがいいん まぁだだよだって、なにがまだなのか。 子供がなにげなく遊んでいる時の昔からの 遠くにあるものは怖くないはずなのに。 誰かのもういいよがあんまり遠くに聞こえ 遠くの雷が近寄ってきたらこわいなっていうあれと かぎかっこの中に住んでいた、ことばたちが、 もういいよが、言葉を脱いでそこから離れる。 まぁだだよも、言葉であることをやめて、ふらっと 子供たちは、すぐになんでも飽きるから。 わたしがつらつら思っていた間に 近所の子たちはもうその遊びはやめにして、 声とリズムが聞こえてきて。 あ、BTSかって思ってあのもういいよとまあ 夕刻チャイムの鳴るころ、きまって誰かの子供 いっしゅんさびしいなにかが追いかけてくる |
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